自身もピアノも弾くし、作曲もするので説得力のあるテーマ。
読みにくさはあるも、章が短いのでそのぶんストレスが軽くなって相殺。
著者の大黒氏は、英国のケンブリッジ大で脳のモデル(AIに近そう)を作る研究をされています。
その他の脳科学的な知見とももろもろ合致するので、わたしとしては、知識の細かい穴が埋まっていく感があってありがたい著書でした。
知識の掛け算がどのようにして創造に結びついていくのか説明してくれています。
どうじにどうしても曖昧にしかならない「芸術的」というワードを入れてきたあたりも興味深い。
曖昧さに立ち向かえるのってとても重要です。そして曖昧なままでもその重要性はべつに減らない。
本の帯にはメンタリストDaiGO氏が10回は読むべきと書いていますが、そこまでとは思わないですが、何度か読みかえすことになりそうです。
大田 2020年129冊目(通算486冊)
こちらのブログで生産的な労働時間についてブログを書いていますが、
大企業で実践されたレポート。
実際にやろうとすると発生するトラブルやそれを乗り越えるための工夫などがしれて良い。
ただ本がほぼレポートという感が拭えない密度の小ささと編集努力の少なさが痛い。
しかし得るものが多いのでオススメしたい。
ちなみに生産性が最も高くなる労働時間は1日7時間。週の合計35時間です。
大田 2020年128冊目(通算485冊)
人生のゲーム化という試みに関連して依存症ビジネスなどにも使われるgamification系を掘り下げてのこの著書。2011年出版。
分厚いが、かなり得るものが多い。
食欲、性欲、慈善活動など多くの行動の根底にある快楽を神経科学の視点で解き明かして(ときに「わからない」と正直に告白もする)くれる。
浮気しやすい傾向の人とそうではない人の違いについては中野信子さんも語っていたいましたが、そして同じ考えでしたが、リンデン氏のほうが深く広い。
原題は、The compass of pleasure。快感のコンパス。compassには「範囲」という意味もあるし、羅針盤の意味もあります。
Kindle版では表紙が違う。
大田 2020年127冊目(通算484冊)
勧めない理由は自分でもよくわかりません。
たぶんコーディネーションの例があまり良いと思えなかったかもしれないです。
それでもスーツの着こなし方やルールやトレンドなども多くを学べます。それもわかりやすく。
出版が2019年なのでまだトレンドも古くなっていないと思います。
ラペルとネクタイの合わせ方とかクレリックシャツ、ジレ、靴、スラックスの裾のちょうど良い長さ、ホリゾンタルカラーなど、わかりやすく実践しやすく、あ、実践しやすい例として使用されているスーツやシャツなどどれも安価なもので使っているので試しやすいんです……とても良い教本です。
ところで実例を観てて思ったんですが、服もですが体型って大事だなぁと。
それからコーディネートって動詞です。
大田 2020年126冊目(通算483冊)
アンドレアス・グルスキーは、1955年生まれのドイツの写真家。
2013年に東京の国立新美術館で展示会があり、そのときの図録です。
彼の作品は非常に大きく、うつるものすべてに焦点があっているように見え、マクロだったり意外にミクロだったりしながら絵画的でわたしたちを観る度に少し戸惑わせます。
グルスキー氏の写真を観た後に街を歩くと彼の視点、彼が作る世界に見える情景を探してしまいます。
そしておもしろいことにすっかりそんなことを忘れてしまっているときにグルスキーを想起しないままに、新たな世界の見方をしていることがあります。
そういう意味でも、私達の世界を広げてくれる写真集です。
大田 2020年125冊目(通算482冊)
わたしはKindleで読んじゃいましたが、著者は書籍で読むことをオススメしていました。
動画がこれからもっと大事になるだろうなぁとは肌感覚で感じてはいたものの、しっかりと調べてはいなかったんですが、この本でその力の強さを感じました。
勢い任せに若いスタートアップ創業者が書いた本ではありませんでした。ちゃんと調べて、ちゃんと実践しています。
幻冬舎の箕輪さんが編集。あの方も時代の空気を掴むのが得意なのだろうなぁと。
テレビがどんどん過去に流れていくそのダイナミズムをここから学べました。
私見:やっぱり行動っすな。
大田 2020年481冊目(通算124冊)
ホセ・オルテガ・イ・ガセット氏は、スペインの哲学者。
この大衆の反逆(The Revolt of the Masses)は、1930年、オルテガが47歳のときに出版したもの。
この本では、現代社会において(約100年まえの現代ですが)、大衆が持つ力とその危うさについて説いています。
「大衆人は他の人びとが建設し蓄積したものを否定しながら、自分が否定しているものによって生きているのである」
無学な大衆を批判しているかと思いきや、専門家もまた「近代の野蛮人」と批判しています。批判ばっかしてじゃあどうすれば良いのかということなんですが、わたしまだそんなにはっきり読み解けていないんですけど、どうもオルテガは、白黒をロジカルにはっきりさせるということに重きをおいていないようです。知的な人間はグレーゾーンに耐えうると聞きますが、その傾向を観る気がします。
それこそほんとうに現代においてオルテガの主張や考えは、なかなか「それが何を意味しているのかはっきりとはわからないけれど気をつけろとは告げている警鐘」として読むことができます。少なくともわたしには。批判というのは、大事なことなんですが、大事ながら決定的に何かをダメにする部分もあるのでしょう。先の引用をみてもその理解は進む気がします。
現政権がダメだとしてどうれば良いのか。わたしは、ここ最近、ジャック・アタリやイアン・ブレマーなどの知の巨人と目される人々の考えを読んでいますが、いつもそこに何らかの疑いの姿勢を差しこみつつ対峙していました。いわゆる知的なエリートに対してのこの疑念は、オルテガを通して、なんというか寄る辺として少し確固としたものになった気がします。
結果、
頭の良い誰かの意見に与したい
という甘えを捨てざる得ないという考えになりました。
自分で考えて調べて考えて行動して自分で決める
ということがどうも必要になってきました。
この生き方や考え方を始めるためのピストルの音になりました、このオルテガの『大衆の反逆』が。
大田 2020年123冊目(通算480冊)
わたしはグラフィックデザイナーもしているので書体や書体の歴史についてまあまあ知識を持ち合わせていますが、この本はこう……何を言っているのかものすごく分かりづらい。というかわからない。前提にしている知識のもちあわせがないといけない。なのに一般の方向けの講演だという。グーテンベルクあたりの時代の活字、挿絵、装飾と言った興味深いテーマで、それらがどういう系譜や機能をもっていたのかを解説していて部分部分はわかるのだけれど、構成、文体、文字の大きさ、いろいろなものが影響しあってとてもとても読みづらい本に完成しています。
誰にもオススメしませんが、ときどき読み返しそうです。
大田 2020年122冊目(通算479冊)
依存症の作り方を知ろうとして、自分たちがどれだけこの依存・中毒の仕組みを使ったビジネスやしかけに簡単にハマっているのかを知りました。
ゲームのみならず、糖質も!インスタなどのソーシャルメディアは、分かっていたつもりでしたが、ポルノや糖質の依存症には、そうだったのかという驚きがいくつもありました。
著者自身が、アルコール依存の経験もあり、自身の依存の正体を知ろうとしてきた経緯も説得力がありますが、ちゃんと進化心理学的な根拠に行き着いていて安心して参照できました。
著者のDamian Thompson氏は、イギリスのジャーナリスト。
チャルディーニ氏の『影響力の武器』と同じくらい、自分たちが知らないところで行動をリードされているのか、ということを知るとものすごくアドバンテージを得られそうです。
すごくすごく良い。
大田 2020年121冊目(通算478冊)
スコットランド出身の歴史学者、ニーアル・ファーガソン氏の著書で、The Civilization(文明)。
西洋がその他を上回る勢力になったのは5世紀前の15世紀ごろから。その繁栄は6つのキラーアプリケーションが支えたというのが氏の主張。6つは、競走、科学、医療、法による支配、消費者主義、職業倫理。
それぞれについての解説に加えて、その後、つまり盛衰にまで解説は及んでいます。
カーの『歴史とは何か』からもこのテーマを抽出できましたが、歴史とは、過去と現代の対話だということをあらためて思い返しました。
ただFerguson氏の文体はとても読みやすいんですが、本人の話し方は少し苦手です(笑)。
表紙が示唆的。
大田 2020年120冊目(通算477冊)
ガブリエル・シェネルについてもっとも詳しくわかりやすく書かれた本。
ファッション史の権威、中野香織さんによる翻訳監修。
黒いカバー、金箔の小口加工などシャネルらしさを体現したブックデザインなのでKindleではなく本で読まれたい。
ガブリエルという伝説は、生きた一人の人間から生まれて存命中に伝説にしているところがガブリエルの凄さ。
本来のタイトルIntimate Lifeは、直訳すると「親密な人生」。彼女、多くの情事からその意味するニュアンスは行間にあふれていました。
シャネルというブランドを通して、ファッションというものアウトラインをもしかしたら理解できるかもしれません。
わたしは男ですので、香水でくらいしかシャネルを纏う機会を得にくいのですが、それでもシャネルが好きです。
大田 2020年119冊目(通算476冊)
村上春樹氏の『羊をめぐる冒険』の英語版。
冒頭の話は何だったのだろうと英語で読んで初めて疑問を感じました。
文句ではなく。
北海道が舞台である場面が多く、わたしの故郷でもあるので親しみを感じます。
英語だとちょっとよくわからない部分があって、それが楽しい。
そういう表現になるのかという発見が、小説そのもの以外の楽しみとなって追加されてお得な気がします。
村上春樹氏の英語の翻訳版は、英語で読むのに不慣れな人にもってこいかもしれません。
ただし村上春樹氏が嫌いじゃない人限定で。
リアリティががっつり欠如しているのでその感覚との相性が必要かもしれません。
それにしてもこのころの彼の作品は、本当に楽しい。
この小説にでてくる夢の描写を読んだせいで、その夢に似た夢をみた気がします。
作られた記憶かもしれませんが。
大田 2020年118冊目(通算475冊)
勧めない理由は、まだ良くわからないから。
2016年に出版されたものでギリシャが大変な状況になっていたことが広く報道されていた時期。
ユーロがヨーロッパの経済的な未来を脅かすという内容。
読むと「そうなのかもー」と思うも、精査したり、自分で判断できるほどヨーロッパの経済・政治的現状を把握しきれていないことを知りました。
主旨としては政治的に統合していないのに通貨だけ統合することでむしろ格差が激しくなっているぞ、ってもの。
代替案も示されていました。
著者のジョセフEスティグリッツ氏は、ノーベル経済学賞を受賞されています。
だからと言って信奉はしないもののその思考は学びたい。
まだ何度か読むことになりそう。だってまだ上手く理解できないから。
大田 2020年117冊目(通算474冊)
村上春樹氏の翻訳で読んだので、久々に英語で読みんでみたくなってKindle版のを購入しました。
が、著作権切れの原稿を流し込んだだけなのか、まずクォーテーションマークが「間抜けの引用符」であること。
ときどき改行が間違っていること。
など、ストレスを少し感じるものでした。リンク先のもの。それでもまあ読めるので、読みました。
村上春樹氏の小説のおもしろさの原点は、やっぱりレイモンド・チャンドラーの文体のなかにあるなぁと強く感じました。
どこを開いても楽しめます。
ストーリーがおまけに感じるほど、文体とキャラクターが楽しい。
ただ、今更ですが、村上春樹氏のプレイバックの翻訳はちょっと鼻につくというか、読み淀むところがあるかもなぁと思い返してみて感じました。
だから英語でも読んでみてよかったと思います。
大田 2020年116冊目(通算473冊)
その存在感が故にどうしても非難の目の矛先をドナルド・トランプアメリカ大統領に(なんなら似たような文脈で安倍首相にも)向けていましたが、著者のイアン・ブレマー氏は、「何がドナルド・トランプを生んだのか」を問うています。ポピュリズムがどうして発生しているのか、だれがトランプ氏を支持しているのか、ということを看過していることがアメリカを(なんなら日本もですね)ダメにするのだという警鐘をガンガンに鳴らした本で、わたしはけっこうな衝撃を受けました。自分がちょっと頭が良いとかまともであるとか思っているとポピュリズムまわりを少し見下し気味になります。それがアホだということです。盲点をがっつり突かれた感がありました。
しかし一方で強い懸念もあります。それはブレマー氏は、グローバリゼーションの失敗がトランプ誕生の遠因だと説いています。そしてその打開策に良識あるコントロール、管理の必要性も説いています。これは、ジャック・アタリ氏の主張にも似た部分がありました。
参照:ジャック・アタリ『2030年ジャック・アタリの未来予測 ―不確実な世の中をサバイブせよ』。
この識者たちが、自由主義、資本主義の弊害を是正するために掲げた知的なコントロールを提案する流れに、どうにも共産主義の発生に似た気配を感じます。共産主義は、知的な昇華哲学でもありました。それもまた大きく失敗したことは誰もが知るところです。一方でわたしは資本主義の欠点もやはり是正しなければいけないとは思っています。それがある種のコントロールによるものだとはちょっと思えないんです。しっくりくる打開策は、ミヒャエル・エンデの考えでした。金銭に限定したものでしたが、それでもそこに光明をみます。
参照:ミヒャエル・エンデ『エンデの遺言』
わたし、イアン・ブレマーもジャック・アタリも好きなんですよ、顔が。
でも盲信はできないでいます。
最近、自分で考えることができ始めてきています。
私見はともかく、多くの気付きや知見を得られるのでかなりおすすめです。
大田 2020年115冊目(通算472冊)
前回読んだ沢村貞子さんの『わたしのおせっかい談義』のときにもかんじたので、その感覚に確信を持ち始めたのですが、沢村貞子さんは、
「近所のお友だちがひとりできた喜びを提供してくれる本」です。彼女の著書は。
そして、彼女は生き延びる能力の高い方で、力の抜き方、仕事の仕方なんかけっこう参考になります。
花がある主役は、役者寿命が短いと看破して脇役に徹し、日々の思うことを筆にしたため、文筆家としても名を広めます。
言葉数が多いのに、うんざりさせるわけでもなく、正論ばかり披露するわけでもなく、それでいて淡々としすぎてもおらず(武田百合子さんは、いくぶん淡々としている気がします。保坂和志さんに通じる淡々さがある)、ほんとうに近所の友だち。作りすぎたおかずを持ってうちに来てくれて、そのまま30分ほどダイニングで話をしながら、お茶飲んだりしてそそくさと帰っていく。
そういう方を一人得たような心地よさや喜びがあります。
大田 2020年114冊目(通算471冊)
チャンドラーのフィリップ・マーロウシリーズのなかで一番か二番に好きな作品がこのプレイバック。
村上春樹氏の翻訳で読むのはじめてで今までの翻訳との違いにけっこう驚きます。
英語で読んだかどうか覚えていません。レイモンド・チャンドラーの翻訳は、村上春樹氏以前だとときどき大幅に省略される箇所とかあったとか。
英語で読み比べても、あんまり気づかなったんですが、読み返すと気づくかも。
フィリップ・マーロウものは、いつ読んでも、どこのページを開いても楽しめます。キャラクターやセリフ、表現が。その辺、村上春樹氏の作品にも通じて言えます。
レイモンド・チャンドラーは、ハードボイルドにカテゴライズされることが多いですが、ひとつ文学でもあります。話の推移より作品の世界に流れる空気が魅力的。
恋をしたくなりますし、バーに行きたくなります。声が少し低くなるかもしれません。
大田 2020年113冊目(通算470冊)
映画みたいな小説で、小川洋子さんの作品全般に言える希薄すぎる現実感。薄い膜のような色気。それのみなら話の展開にも引き込まれます。
チェスがしたくなります。そして長続きしません、わたしの場合。
アゴタ・クリストフの悪童日記と通じるのは、頭の良い少年が生き抜く、というプロセス。
わたしたちは結局、いつも知恵を絞って打開策を見つけながら生きていく生き物なので、こういう姿を見せられるとたまらないわけです。彼岸此岸の差を感じることがあろうとも。
わたしたちを導きもしないのに別世界に引き込むのが小説の素晴らしさのひとつ。この小説の世界は、空気の味が少し違うので、行って帰ってくるとほっとする。
大田 2020年112冊目(通算469冊)
面白い小説って何があったかなぁということを思い返して、そのついでに再読。
やっぱり面白い。
コールで頭がよい双子の男の子たちが、過酷な状況をひょうひょうと成長しながら生き延びていく内容なんですが、とにかく双子が強い。グロテクスなところも少しあるのですが、二人が成長していく過程が、もうとにかくすごく読者を引き込みます。
もうただのめり込むだけに読んでもいいですし、大変なとき(今みたいなとき)に読むと自分も強くなってやろうという気も湧きます。初っ端から意外な展開の最後までずっと楽しめます。
3時間もかからずに読みきれると思います。
大田 2020年111冊目(通算468冊)
大田 2020年110冊目(通算467冊)