前著のデンマークの生活を心地よくする思想・文化を紹介した『ヒュッゲ』は良かったんですが、こちらはその続編をむりやり編纂した感がいなめなく、内容は世界の幸福の有り様をとりまとめたもので、デンマークの文化から学ぶというフレームからは大きくはみ出し、そして食感が薄い。
『ヒュッゲ』はおすすめ。こちらはオススメしない。
大田 2020年109冊目(通算466冊)
第一次大戦後にドイツで興ったアート、デザインの学校とムーブメントが「バウハウス」。直接ではなくともこの影響で生まれた書体が、ルイ・ヴィトンのロゴにも使用されているFutura(フーツラ)。そもそもその流れはイギリスのウィリアム・モリスらによるアーツアンドクラフツ運動から。産業革命による粗悪な大量生産物に対してクラフトマンシップへの揺り動かしんですが、日本では民芸という形で伝播して興っています。
これもグラフィックデザイナーやクリエイティブディレクターでなければ精読しても良いし、ざっと目を通すだけでも良いでしょう。
話が少しそれかねませんが、デザインにしろ音楽にしろ、多少の数学は避けて通れないなとあらためて本書を通じて痛感しました。日々数学も精進したいものです。
疎い方ほど、デザインまわりはざっと目を通してそのエートスのようなものの匂いを知っておくと、みえないところでアドバンテージを得られるものです。まさにセレンディピティ。
大田 2020年108冊目(通算465冊)
日本なら中野香織氏や最近ならMB氏も、ファッション史をわかりやすく解説してくれる権威ですが、イギリスにおけるファッション史の権威ともいえるCally Blackmanによる、女性ファッションに比していくぶん軽視されがちなメンズウェアのここ100年の潮流にフォーカスした本。
時代に関わらずファッションの機能として通底しているのは、それが記号であるということ。どういう内容の記号であるかということが時代にそくしているわけです。時代の空気を読んで、それをデザイナーやインダストリーが目に見える形に換言していくのがファッションです。時代の空気には、イズムや思想が多く含まれているので(空気中の窒素くらい。つまり78%ほど)、「ファッションというのは時代の哲学を記号にしたもの」と捉えることができます。
つい、疎い(日本の経営者に多い気がします)ものからすると表層的なものとしてファッションを軽視しがちですが、または場にそぐわないリスクを取りかねないということでコンサバティブに偏重しがちだったりして、その知識や経験が少なく方が多いように思います。そうなるとスーツ、靴、その他の本来の意味をしらないままその記号を発していくことになります。それは、意外なほどの不利益を生じさ、しかも終生それに無自覚なままになりかねないので、ファッションについては一通り知っておくほうがずっとお得です。
今から知ろうとする場合、MB氏の著書のほうがとっつきやすいしわかりやすいのですが、それを補完するものとしてこの著書もぜひ目を通していただけると得るものが必ずあると思います。
関連して中野香織氏の『アパレル全史』もおすすめです!
より実践的な本としてはMB氏の『メンズファッションバイヤーMBが教えるビジネスコーデベスト100』もオススメします。
あ、本紙についてでですが、何がわかるのかというと今まで目にしていた男性ファッションの裏や底にある歴史的な流れです。レイアウトをふくめてエディトリアルデザインと構成がいまひとつわかりにくいのが難ですが、それでも
ダッフルコートってそんなに濡れそぼってしまって良いものなのか(笑)
とか
レザボア・ドッグスのスーツはアニエス・ベーで、サングラスが(レイバンの)ウェイファーラーだったのか!
とかわかって、いちいち楽しめます。
トレンチコートがどこから来たのかとか(塹壕)、南極探検のアムンセンとスコットたちの来ていたパーカーもバーバリーだったのか、等々知るとファッションを観る目が変わります。
大田 2020年107冊目(通算464冊)
グラフィックデザインに従事するならば、どうしても通らないといけない基礎は、ドイツやスイスのミッドセンチュリーに至るデザインの遍歴とその基礎的な考えです。
タイポグラフィからグリッドシステム、数学的なプロポーションを基礎にしたバランスのとり方。
その基礎知識を以ってデザインし、それを熟知した上で崩す……守破離はここにもあって、このあたりをおざなりにしている方は結構いるけれど、デザイナーから見ればわかってもクライアントからみるとわかりにくかったりします。
本書は英語ですが、ざっと目を通すだけでもグラフィックデザインがどういう潮流を持っているのか肌で感じられると思います。
スイスデザインがどうして重視されているのかについてですが、例えばデザイナーでも知っているほど有名な書体のヘルベチカは、1957年にスイスのローザンヌでの展示イベントで発表されてから世に広まっていて、そこからもスイスのミッドセンチュリーからグラフィックデザインが世界に広がっていく流れが伺えます。
ほんと観ているだけでも楽しいですよ。
幾何学的な図で何かを表現するって(例えば音楽を)すごいですよね。でもけっこう伝えるんです。デザインの歴史にある知識ってすごい。
大田 2020年106冊目(通算463冊)
ジャック・アタリ氏は、フランス大統領の政策提言を行ってきたすごい人なんですが、フランスという国がちゃんとした人を大統領の周りに置く国であることもすごい。さすがバカロレアのなかので哲学の問題が市井で毎年話題になる国。知的レベルが高い。
この本は、幅広くかつバランスの良いジャック・アタリ氏による食の歴史についてまとめたものなんですが、サピエンスやネアンデルタール人のころから始めての歴史で、彼の好奇心を反映して多岐に渡っていて、心象としては他の著書をたとえにだして失礼やもしれませんが、「食のサピエンス全史や!」というものでした。食べ物と脳との関係や高級ホテルにおける食、加工食品について、生物学的なアプローチ。
食のプロにも、そうではない人にもひろく面白く読めて、そして得るものが多い本であろうと思いました。わたし自身、この本は何度も開いてみたく思います。なので、今回はKindleで読みましたが、本もほしいなぁと思いました。そうするとリビングや本棚においておけば、目に止まったときに読む機会をえられそうで。
久々に「おお!これは必読書って言っても良いはず!」と思える本でした。サードドア以来かしら。
ちなみに翻訳者の林昌宏さんがジャック・アタリ氏と朝食を取ったホテルは、パレスホテル東京です。テラス席はとても気持ちが良いので、おすすめです!
大田 2020年105冊目(通算462冊)
Textureとは「手触り」という意味と「素材感」という意味の両方で定義されている編集のされ方。
グラフィックデザイナーやクリエイティブディレクターが、クライアントに説明するのにときどき苦戦する「手触り感」の重要性が、なんとなく伺いしれるので、メーカー側もまたざっと目を通していただきたいなーなんて思う内容でした。というのも格安の紙と(チラシやポスターなら、コート紙)手触りが良い紙(ファンシーペーパーと呼ばれるものが多い)は、価格が数倍以上に異なってくる。数枚ならまだしも量が多くなれば、当然原価に大きく影響を及ぼします。そして格安の紙と手触りが良い紙の差をクリティカル?という説得できるかたちで説明するのが難しいんです。
カルティエがコート紙使わないのは、それがブランドを下げるからなんですが、それに疑問を持たない方に、その理由を説明するのはとてもむずかしい。ご飯なんて食べられた良いという人に、1回で、ファストフードの100倍する料理のその価格差の理由を説明するのが難しいように。そしてそれがロジックとして正しくても、それを相手が聞きたいかどうかと言えば、ほとんど聞きたくない長広舌になる。
だからクライアントとは、ブランドを作っていくときに、敵対するのではなくって、ともにブランドを高める同志だという意識を共有することが大事なんだよなぁと。互いの専門性を尊重しながらも批判しえあるのが望ましい関係だなぁと思いました。本に触発される形で。
なんて課題に思いをはせる結果になりましたが、手触りの大切さをなんとなく思い出しました。2010年と10年前の本なのでアマゾン上には中古もなく。とはいえ、勧めないというわけでもないです。
大田 2020年 冊目(通算冊)
1961年に出版されたイギリスの歴史学者、エドワード・ハレット・カー(Edward Hallet Carr)氏の著書。
翻訳は、清水幾太郎氏。
歴史を客観視しようとしてきたそれまでの歴史学に対しての批判がメインか。翻訳者は「静かな」口調というが、わたしが感じたカー氏の声は、「抑揚がないが、冗長ではなく、重要な部分がどこかわからないままに重要な箇所を逃すまいと常に緊張した姿勢で拝聴しなくてはいけないのでとても疲れる。疲れるが、パラパラと差し込まれるシニカルさがスパイスのように効いて、ダレそうになる集中力が絶滅せずに息も絶え絶え生き延びつける……そういう空気を創る」ものと感じました。例えが長い。
ケンブリッジ大での講演を書籍化したものですが、冒頭のエピグラフで引用された『ノーサンガー・アベイ』というイギリスの作家、ジェーン・オースティンよって書かれた長編小説(1798年から書かれ始めて、1817年に発表されたもの)の歴史関する一節が、見事にカー氏の言わんとしているテーマを表現しています。
「八分通りは作り事なのでございましょうに、それがどうしてこうも退屈なのか、わたしは不思議に思うことがよくございます。」
エピグラフって、それをコーディネートしてくれる専門職の人がいる気がするんですけど、どうなんでしょう。
この本に何度も出てくる表現は、
「歴史とは、過去と現在の対話である」
というもの。カーの思想を指して、Relativism(相対主義)という表現がされますが、この表現にそれが伺えます。
歴史を学ばされるのは、面倒ですが、自ら進んで知ろうとした途端に魅力が燦然と輝くから不思議。その歳、カーのこの著書を読んでおくとバランスが良くなりそうな気がします。ゾンバルトも合わせて読みたいかも。
大田 2020年460冊目(通算103冊)
また北欧ですが、インテリアや空間のなかでの過ごしやすさについては、北欧は白夜のためかかなり深い造詣が全般的にあります。
著者のハンス・ブルムクヴィスト氏は、インテリアの本を多数だしています。ブルムクヴィストとといえば、デンマークの小説『ミレニアム』に出てくるミカエル・ブルムクヴィストを思い出しますが、北欧の名前なんだぁとあらためて思いました。
レイアウトはあまり美しくないんですが、楽しいです。階段下の押入れみたいなところに寝る場所を作った例などはドラえもんを彷彿させますが、おしゃれです。もしもドラえもんが北欧だったら、のび太の部屋はけっこうおしゃれだったかも。
北欧のインテリアの事例、アイデアをがっつり目にしておくと内装系のセンスは非常に底上げされると思います。これに限らずインテリアに関する知識を獲得する際には、北欧系の事例を5冊くらいみておくと良い気がします。
大田 2020年102冊目(通算459冊)
本を読むのにはそこそこ時間がかかりますが、どれだけゆっくり読もうと読み込んでも忘れます。
どれくらい忘れるかと言うと……その話はこちらのブログで解説しています。
忘れないようにするために定期的な復習が必要なんですが、その復習をもうっと効果的にしようという試みを紹介しているのがこの本です。
具体的には4回のアウトプットとスキマ時間。
4回のアウトプットの内容は、1.覚えたいことをマークする。2.人に話す。3.本の感想をSNSでシェアする。4.レビューを書く。
気づかれた方もいらっしゃるかもしれませんが、これ(このレビュー)がまさにこれに相当します。
本の読み方については、「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく 東大読書やメンタリストDaiGOさんの知識を操る超読書術が参考になります。
冗長なところもあるかもですが、得るところの多い本だと思います。
大田 2020年101冊目(通算458冊)
50歳という短い生涯のスティーグ・ラーソン氏、最後の作品。
ミレニアムシリーズの3番目。
2の結末に度肝を抜かれた読者は、話がどう続くのか予想できないかもしれません。
が、もうしっぽまで楽しめる内容と展開です。これから読まれるであろう人は期待して良いです。
ラーソン氏の死後、このミレニアムシリーズは現在6巻まで出版されているようです。
わたしはこの3巻目までしか読んでいません。
ラーソン氏は、10巻くらいまで書くつもりだったようです。
ところでラーソン氏の死因は、心臓発作ですが、ラーソン氏は普段からおびただしい量のタバコを吸い、加工食品を食べ、コーヒーが大量に飲んでいたそうです。
内容は、主人公は、強き女性ハッカーのリスベットで、映画『ドラゴン・タトゥーの女』では、ダニエル・クレイグが演じたミカエル・ブルムクヴィストも活躍しまくります。
翻訳も具合の悪いところはありませんで、スムーズに読めました。
わたしにとっては最高の娯楽であり、リスベットの強さはあこがれの対象です。
大田 2020年100冊目(通算457冊)
前回紹介した『The Kinfolk Home』は、英語でしたが、こちらは日本語。
著者であるネイサン・ウィリアムス氏は、Kinfolkの狙いを「生活を楽しむための自然な取り組みの提案」と述べていて、それが家具から食事にまで及ぶのは当然で、結果、この本には、デンマークの生活を楽しむ思想「ヒュッゲ」に包まれた食事や人の紹介がいっぱい詰まっています。
わたしは、食事の撮影のための参考資料に購入したのですが、生活全般を提案するKinfolkに強く共感する結果となりました。
副題に「小さな集まりのためのレシピ集」とある通りの、小洒落て美味しそうなレシピが多数あって、なかにはお茶漬けもありました(笑)。
Kinfolkの出版物はプリントも楽しいので、電子書籍ではなくて本で購入して読みたいのでそうしています。
大田 2020年99冊目(通算456冊)
インテリアや内装を考えるにあたって非常に非常に有効な、アップデートされた生活空間の好例集です。
本の紙質やデザイン(文字の大きさや種類も含めて。ただし本文の文字の大きさはやや小さすぎです。)を含めてとても得るものが多い本です。
中の紙は、非塗工紙を使っていて、インクは紙に沈み込み発色はぼやけています。写真は、コントラストが抑えめで、雑誌Kinfolkとともに統一されたトーンを観ることができます。
特筆すべきは、上品に抑えられたバニティ(虚栄心)。
「これがおしゃれだよ!」という見栄の例示ではなくって、「心地よい空間を追求していたらこんなふうになったけどどうかな?」という提示があります。
Kinfolkがデンマーク、コペンハーゲンのライフスタイルマガジンなので、北欧的な偏重はもちろんあるのですが、同じ北欧のライフスタイルマガジン「MY RESIDENCE」よりは明るく温かい。ともに読むとバランスが良くなります。
空間デザインを考えるなら、Kinfolkの別編集のこれらの本(Home以外にTableがあります)に目を通していくのがとても有効だとわたしは考えています。
大田 2020年98冊目(通算456冊)
映画『ドラゴン・タトゥーの女』でも有名な、スティーグ・ラーソンの小説。彼の存命中はシリーズは3つめまで出版されました。死後も続いていますが、彼以外が書いています。
わたしは、このシリーズ2で、数学に興味をふたたび持ち始めました。フェルマーの最終定理がなんども出てくるのです。
そのミレニアムシリーズのおもしろさは、主人公のリスベットのレベルアップです。
漫画『俺だけレベルアップな件』とその点、同じ……近いです。
人は、どうにもレベルアップが好きなんですね。
そんなわけでこの小説も参考に、わたしは「人生のゲーム化」を進めていきます。
人生のゲーム化についてはyoutubeでこそこそと毎日アップしています。
あ、肝心の小説についてですが、単純にのめり込めます。
ただし著者のスティーグ・ラーソン氏は、ハードワーカーのヘビースモーカーで、それが祟ってか、50歳という若さで亡くなっています。
面白い小説を書くってとても素晴らしいですが、生き急がなくてもいいのに、といつも思っています。
By Source, Fair use, https://en.wikipedia.org/w/index.php?curid=31231367
大田 2020年97冊目(通算455冊)
この本を読んで想起したのは、橘玲氏の『「読まなくてもいい本」の読書案内 』という本で、紹介されている知のパラダイム・シフトです。
この本の主旨は、パラダイム・シフト以前の本は読まなくていい!というものなんですが、立花隆氏と佐藤優氏の薦める膨大な本やライフスタイルは、ばっちりこの「パラダイム・シフト以前側」にあると感じました。
このパラダイム・シフトとは少しわかりにくいんですが、キーワードは、ブノワ・マンデルブロ氏。
フラクタルの説の方なんですが、
それがどうしてパラダイム・シフトになるのかというと……
長くなるので、超絶大雑把にまとめると
マンデルブロ氏の説以前までは、大体は正規分布をつかった確率論と決定論で説明できる世界でした。でもときどき説明できないことがある。経済学においてもしかり。それが何なのか?ということがマンデルブロ氏の説で見えて来て、その結果、世界が実はがらりと変わりました。それはベル曲線ではなくて、ベキ曲線で説明できるものでした。
わかりにくい?
うーん、もし興味を持たれたら橘玲氏の『「読まなくてもいい本」の読書案内』をオススメください。
わたしもいま読み返しています。
大田 2020年96冊目(通算454冊)
ウィンストン・チャーチルの自伝で、原題のEarly Lifeとあるように、首相になるまえのチャーチルの半生を綴ったもので、退屈かと思いきや、ぜんぜん。
南ア戦争で捕虜になるも逃亡する話などはスリル満点です。
ただわたしは、チャーチルのことをそんなに英雄視していなくて、「あのタイミングでなければ、首相になっていなかった気もしないでもないし、あのタイミングだったから彼の能力を発揮できたということもあろうて」となんとなく思って、別にそれが彼の功績に影を落とすわけではないのですが、「すごい!」という評価に対して、実力を算出するにあたり、なんらかの引き算する要素がある気がするわけです。ショートスリーパーとか見せて、風呂に三時間くらい入っていたりとか、そういうエピソードから。
それでもこの半生は、楽しい。胡散臭いんだけど、なんかすごい叔父の話を暖炉の前で酒や茶を飲みながら年に1度ゆっくりと拝聴する、みたいな心持ちで挑むととても楽しめます。
チャーチル、信用していないが好きです。
大田 2020年95冊目(通算453冊)
翔泳社のこのシリーズは、表紙からはレベルが低そうに見えるかも知れませんが、いつもしっかりしています。
ごまかしもなく、初心者を深いところまでのリードしていく内容で、とてもとてもいつも素晴らしい。
ずっと接していても、戦略としてソーシャルメディアをみたときに、ふとどこからどう始めたものか?と迷うことがあるでしょう。
そんなとき、まずはこの本から始めるのが良さそうです。
2018年出版で、それくらいの時代にアップデートされています。
不足なんてそりゃあるものの、基礎を知るにはすごく良かったです。そして姿勢も誠実です。
愛されることが大事というのは、すごくまっとうに思います。昨今の広告業でもよく使われる炎上は、わたしは嫌いなので。
大田 2020年94冊目(通算452冊)
何年もずっとコーヒーを淹れてきてて、いつも美味しく思っていたんですが、
「ちゃんと淹れるってどういうことなんだろう?」と疑問に思って検索したら、井崎さんの動画が出てきて、おもしろかったので本も買ってみました。
井崎英典氏は、2014年、イタリアのりミニで開催されたワールド・バリスタ・チャンピオンで優勝された方。
こちらが彼のウェブサイト。
わたしは、これで「スケーリング」を覚えたんですが、スケーリングとは、測って比べることなんですけど、もう途端に味の細やかな違いについてセンシティブになったというとか
例えばお湯が87度と90度ではどう変わる?とか確かめるようになって、結果、何でも測って比べたくなりました。ようやく憧れのオタクに近づけるかも?という喜びもかすかに感じました。
検証するには、記録が必要で、そのためにも測ることが基本。
それを得ただけでも、もう儲けものでした。
他の内容ももちろん良いんですけど。
気が向いたら他の人のコーヒーの淹れ方の本も買って比べてみたい。
大田 2020年93冊目(通算451冊)
レオシュ・ヤナーチェクの最後のオペラ作品、「死の家より」のもととなったのが、フョードル・ドストエフスキーのこの作品。
ドストエフスキーの人生は何かと凄まじいのですが、ミハイル・ペトラシェフスキーが主宰する空想的社会主義のサークルに参加したため、1849年(ドフトエフスキー28歳のとき)に逮捕されて、死刑を宣告されるも直前にニコライ1世により特赦を受けて、シベリアへの流刑となり、5年ちかく服役し、この体験をもとにして書いたのが、本書。
リアル。壮絶。
ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』を思い出しました。
ドフトエフスキーのタフネスは、その後も発揮されて、彼が強靭なメンタリティを持っているとは思うも、それでも「ああ、人って強くなり得るんだな」というのが読後に一番残った印象でした。
もちろん息絶えていく人も多いのでしょうが、人は、生き残るための力というのをものすごく持っている。それは人によるのかも知れないのですが、その可能性を自分のなかに探してみてもよいのではないか?という考えが、この本から得た大きな財産でした。
こんな時期にすごくオススメな本です。
大田 2020年92冊目(通算450冊)
名脇役の沢村貞子氏は、食事の記録を長くつけていて、それが今テレビで番組になっています。飯島奈美さんが、献立の名前だけを見て、想像で復元するもので、テレビを普段みない私ですが、これはときどき録画したものを見ています。
これは本には書かれていませんが、
85歳のとき、貞子さんの夫が死去して、その後、密かに書いていた原稿が見つかってそこにはこう書かれていたそうです。
「こんなに楽しい老後があるとは思わなかった。これはみんな やさしくて頭の良いていこ(貞子さんの本名)のおかげだ。僕は幸せだった。」
さて、この本は、料理についても少し書かれていますが、おもいに雑談です。がゆえに、まるで沢村貞子さんがうちにきていろいろ話して帰っていくというように感じて、近所に仲の良い年上の方ができたような心持ちになれます。よく喋る。小言もしつこい。でも、愉快。
和風のヒュッゲ(デンマークの思想で、心地よく過ごす工夫という意味)がここにありました。
一冊これがリビングにあると、食後やティータイムに読めばとたんに来客を得たような気配に包まれます。
オススメです。
大田 2020年91冊目(通算449冊)
インテリアや内装、店舗デザインのブランディングに関わらない人には、ディープすぎる照明デザインガイド。
すごくピンポイントで知識が得られてありがたいけれど、関係ない人にはどうにもそそられないかもしれません。
ただし、読むとレストランやホテルなどの施設で、照明の設計についていろいろ気づけて楽しくなるかもです!
大田 2020年90冊目(通算448冊)