西田幾多郎氏とは同級生の鈴木大拙氏の著書というか訳書。原本は、「Zen Buddhism and its Influence on Japanese Culture」というもので英語で書かれたもの。
がゆえに、元来、諸外国に向けて、日本文化とそこに関わる禅というものを紹介するのが目的の著書です。
鈴木大拙氏は、1870年生まれ、1966年に死去。享年95歳。長生き。西田幾多郎氏とともに石川県の出身。聖路加病院で亡くなっています。
1911年に結婚。相手は、アメリカ人のBeatrice Lane氏。
西田幾多郎氏が亡くなったときに、鈴木大拙氏は、遺骸を前に号泣したそうです。
禅とはなにか?ということを知るには良い書なのは確かなんですが、すんなりとはわからないです。
ただ、ロジックから離れて、美は醜であり、醜は美である、というシェイクスピアの引用をしつつ、汝は我であり、我は汝である、という言葉から少しずつ体感していけそうなのは、西田幾多郎も描くのが好きだった円相図のような世界観。
ユングやハイデッカーとも交流のあったグローバルな仏教学者。
大田 2020年230冊目(通算588冊)
ネット上での炎上は、解決し難い問題ですが、その本質について学究的に迫った知見は少ないかもしれません。
本書では、定量的にこの問題の実像を明らかにしようとしたアプローチと結果が紹介されています。
結果は意外なもので、ネット上での炎上に関わっているのは、(そしてそのままネトウヨ(ネット上の右翼)にもほとんど当てはまる)ユーザーのうちのごく少数、1%ちょっとくらいの割合だということ。
くわえて、炎上に参加している人物像が、若い男性で高所得者(ネトウヨの調査では年収800万円以上)で既婚者で子どもがいる、というものでした。
わたしたちが思い込みで描いていた人物像と大きく異なっているのではないでしょうか。
その他、ネット炎上についての研究とその研究方法について解説もしています。
出版は2016年。
大田 2020年229冊目(通算587冊)
1870年生まれの日本の哲学者、西田幾多郎の哲学の思想書。もともとは『純粋経験と実在』というタイトルだったのですが、出版社が反対し『善の研究』になりました。
出版は1911年。第一次世界大戦前。
おもしろいことに読んでみても「わかった!!こういうことだ!」という理解には至らず、なんとなくなんとなく考え方が変容する刺激でした。
わたしの好きな言葉にラテン語でCredo quia absurdumというものがあるのですが、「不条理故にわれ信ずる」という意味で、キリスト教関連のものなんですが、それを思い出しました。
本書のテーマは純粋経験というものですが、普遍的なもの対して個にフォーカスを向けたものです。他の西洋哲学の知識を前提とした話もありますが、ぼんやり読んでいると西田幾多郎氏が円を描くことを(円相図)好んでいたこともなんとなく納得していくものがあり、それが何かというとロジックを超えるものが、まわりまわって自分という意識にあるという考えで、じゃあそれなんだろう?という探求であもります。
わたしのロジック以上に非ロジックが大事であるという考えにだんだん傾倒していく追い風や土台になっている気がします。
西田幾多郎氏が禅に打ち込むようになったのは高校の同級生の鈴木大拙氏の影響。
ところで西田幾多郎氏も鎌倉で亡くなっています。研究者や哲学者、文筆家のおおくが鎌倉で暮らしていたようです。辛いときにはよく海にでかけて心を静めていたとか。
大田 2020年228冊目(通算586冊)
弊社でデザインを担当している数学問題集にも執筆されている著者、小島寛之氏の渾身の文庫本。
小島さんの文体も姿勢も誠実で、コツコツと進化していく様子も伺えて、好きです。
無限をテーマにしたいくつものは話を通して、数学における無限の面白さを紹介してくています。
著者の小島さんは、ケインズ経済学に詳しい。ケインジアンに憧れ、10数年を経てケインジアンになり、この著書の元になった書籍を大きくグレードアップしています。
わかりやすくはなっているもの、数学にうといとついてくのがなかなかしんどい内容です。
それでもおもしろい。
よりわかりやすく、身近なテーマから数学に近づいていくには、桜井進氏の『雪月花の数学』をオススメします。こちらは日本の美のなか(たとえば俳句や浮世絵)にみる数学(和算)について詳らかにしてくれています。
一方で、ロマンある数学の世界を覗くには、フェルマーの最終定理についての物語もオススメ。
大田 2020年227冊目(通算585冊)
モダニズム建築を代表するメキシコの建築家、ルイス・バラガンの建造物を写真、それぞれのスケール、平面図、解釈などを紹介してくれる、かなりありがたい本。
バラガンが何を考え、その思想をどうデザインとして結実させたのか、ということを疑似体験できます。
建築に関わらない方々にも、広く深く興味深い知見を提供してくれると私は思います。
暗いこと、明るいこと、歩くこと、回遊することで得られるパースペクティブな展開。
バラガンのデザインにはワクワクします。
大田 2020年226冊目(通算584冊)
【良いモノ・アーカイブ】№90 Luis Barragán(ルイス・バラガン)_建築家
2013年出版。著者のジャレド・ダイアモンド(Jared Diamond)氏は1938年生まれのアメリカ合衆国の進化生物学者、生理学者、生物地理学者でノンフィクション作家でもあります。現在はカルフォルニア大学ロサンゼルス校にて社会科学部地理学科の教授。
テーマも内容も興味深いのですが、文体は(翻訳のせいかどうかは不明)俗っぽい。俗っぽいのは、構わないだけれど、果たして学術よりなのか、冷やかし気味の考えの披露なのか、ちょっと判断がつかなくなる気配があって心地よくない。しかし知ったつもりでいたこととは異なることが多く書かれていたので、自分なりに真偽を確かめてみたい。そのあたりはありがたいし、ワクワクする。しかし、回りくどいところもあって「結論」を探すことになるのはつらかった。
原題は、Why is Sex Fun?(セックスはなぜ楽しいのか)。
今のところ勧めないですが、検証後、変更するかも。
男性がなぜ授乳しないのか、男女の利害関係、セックスアピールの真実など、かなり興味深い切り口から掘り下げてはいてくれています。
大田 2020年225冊目(通算583冊)
1992年出版で村上春樹氏が43歳くらいのときの著書。文庫版での出版日なので40歳くらいって考えておくのがいい具合でしょうか。
イラストは、安西水丸さん。安西さんは12014年に亡くなっていて、享年71歳。現在の村上春樹さんが同じ71歳。
このころの村上春樹さんの文章は、脂が乗っているというか、じつに気持ちがいい。
読みながら、イラストを観ながら思ったんですが、村上春樹さんの好意的な印象の形成に、安西水丸さんのイラストはものすごく貢献しているんじゃないかと。
今読んでも、村上春樹ファンじゃなくても、楽しめるんじゃないかなーってエッセイ集でした。
大田 2020年224冊目(通算582冊)
わたしのなかでは安心の哲学の人、養老孟司氏。
老猫まるについて思うところを交えながら、80歳の養老さんがいろいろぼやくエッセイ集。このぼやきがいちいちハッとさせられる内容です。
そんなわけで養老さんの住む鎌倉に引っ越そうと思います。
大田 2020年223冊目(通算581冊)
ターリ/シャロット博士の楽天主義バイアスの本。
基本こちらの動画をすごく詳しくした内容です。
楽天主義バイアスのススメと危険と最適な利用法。
楽天主義バイアスという知識を持ちながら楽天主義バイアスに陥ると「備えるぞ!」という内容です。
人生が変わる知見です。
大田 2020年222冊目(通算580冊)
遅筆、乱筆で有名な小説家、エッセイスト、テレビドラマ脚本家。1929年生まれ1981年に取材中の台湾で飛行機墜落事故で死去。享年51歳。
料理好きで、妹の和子さんと赤坂で小料理屋「ままや」を回転するほど。死後も和子さんが営業し続けるも1998年に閉店。
おしゃれ。
虫嫌い、猫好き。
本書は、向田邦子さんの死後に出版されたエッセイ集。
他愛もない情景描写などが、どれもとても生き生きとしており、読むだけでなぜか心躍る。しかし、飛行機嫌いで飛行機にのるときに部屋を片付けすぎると「虫の知らせがあったのかも」と言われそうで汚いままにしてでかけていったという「ヒコーキ」というエッセイも含まれています。その3ヶ月後に飛行機事故に遭ったことを思うと本を持つ手は少し重くなります。
わたしは台風10号が九州に上陸する前夜に台風の来る日の一家の様子を描いた「傷だらけの茄子」を読んだので、共感がひとしおでした。
大田 2020年221冊目(通算579冊)
向田邦子さんのエッセイのなかで短歌が紹介されていたので、吉屋信子(よしやのぶこ)さんの本をひとつと思って読んでみました。吉屋信子さんとは1896年生まれ、1973年に77歳で死去された日本の小説家です。
『わすれなぐさ』は、昭和7年(西暦1932年)、吉屋信子さんが36歳のころに、少女雑誌(なるものがあったのか!)『少女の友』に連載されていた小説です。内容は軟派でお嬢様の陽子、優等生の一枝、個人主義の牧子の関係を描くまさに少女小説。ですが、同時に当時の男尊女卑の風潮への反駁も巧みに織り込まれています。
吉屋信子さんの話にもどりますが、吉屋信子さんの父は、新潟県警署長で、信子さんにゆえに新潟生まれ.その父は、頑固な男尊女卑の思想の人で、信子さんのこの思想への反駁はこのころから育まれた様子。父の転任にともなって栃木の高等学校にて、新渡戸稲造の演説を聞き、感銘を受けます。その演説で新渡戸稲造氏は、こう述べて、そこに心打たれたとのこと。
「良妻賢母となるよりも、まず一人の良い人間とならなければ困る。教育とはまず良い人間になるために学ぶことです」
1919年、吉屋信子さんが23歳のとき、『屋根裏部屋の二處女』で同性愛体験を語っていますが、1919年といえば、第一次世界大戦が終わったばかりの頃。ずいぶんと先進的な吐露だったのではないでしょうか。
1923年に人生のパートナーにもなる門馬千代と出会い、ほぼ生涯をともにして生きました。1928年(信子さんが32歳のとき)からヨーロッパへ、門馬千代さんも同行。パリで1年ほど過ごしています。本書は、帰国後に書かれたもの。
日中戦争では、チャイナに派遣されて、従軍ルポルタージュを発表し、のちにそれを戦争協力だとして非難されます。
晩年は、神奈川県鎌倉市長谷に邸宅を建てて過ごしていました。その邸宅は、信子さんの死後、千代さんによって鎌倉市に寄付されて、現在は吉屋信子記念館となっています。
大田 2020年220冊目(通算578冊)
Jonathan Haidt氏は、アメリカの社会心理学者で、この本は人の倫理観がどこから生まれて、どういう結果になるのかを解説したものです。
TEDでもリベラルとコンサバがどのように生まれるのかそのルーツについて語っています。
人はどうして右派と左派、保守とリベラルに分かれるのかという話とそれから倫理というのものがどういうふうに形成されるのかということを解説しているのですが、まず倫理というものが理性よりずっと感情によって形成されているということを詳らかにしています。
リベラルは、基本、コンサバティブに負ける。
ところでこの本のなかで確証バイアスについても出てくるのですが、それについてはわたしnoteで解説しているので興味があるかたはぜひ一読されたいです。
大田 2020年219冊目(通算577冊)
ウィンストン・チャーチルを連想する日本の政治家だと思いきや、読んでみると(少し知ってみると)チャーチルとはまた印象がずいぶんと違いました。
妾の話も赤裸々にでてくるし、金をばらまいた話も多くでてくるも、著者、早野透氏によるバイアスもあるのでしょうが、人としてどうしても好印象になってくる、知れば知るほど「人としての魅力」が浮き彫りになってくる、そういう印象を受けました。
また同時に日本の政治は、未だ世襲を含めた派閥の系譜が脈々と生き続けているということにも気づけました。それは気持ち悪く思います。海外と比べてどうなのかということにも興味がわきました。とまれ、チャーチルについて知っても、興味は湧くものの好感はわかなかったのですが、田中角栄は、「おやじ」と呼びたくなるような好感が湧いてきました。良いことかどうかは定かではありませんが。
神楽坂に目白を散策したくなりました。
大田 2020年218冊目(通算576冊)
原題はは、「Le Capital」。資本という意味のフランス語。
久々に必読書に分類した本でした。
なぜか?という理由は、ほぼこの本の本質と同じになると思うのですが、「なぜ経済的格差が生まれ、それは広がり続けるのか」を解き明かしているから。r>gという不等式を用いて。
rは、資本の平均年間収益率(rate of return)で
gは、その経済成長率(growth rate)。
どういうことかというと引用するとこうなります。
「資本収益率が経済の成長率を大幅に上回ると、論理的にいって相続財産は産出や所得よりも急速に増える」
ということになります。追記すると
「相続財産を持つ人々は、資本からの所得のごく一部を貯蓄するだけで、その資本を経済全体よりも急激に増やせる」
ということで、つまりお金をいっぱい持っていると労働収益よりずっと稼ぎやすい、ということになります。
これは明らかな割にみな注目していない現代の経済のシステムのありようです。
10万円しか持っていない人が1億円を稼ぐのは、かなり大変なのに比べて100億円持っている人にとってはかなり簡単なんです。
ちょっと税金とは考えるのおいておいても1%の利回りで運用すればいいだけの話になります。インデックス投資でも数%の利回りは期待できるのですから。
金持ちは、誰よりも働いてるかと言えば、そんなことはないんです。所得や産出より大きな資本のほうが稼げるから。金が金を作ってくれているんです。そういう意味では、トルストイの『イワンの馬鹿』はキリスト教的なおとぎ話です。
この考えの根拠をいろんな視点からデータをベースにしつつ紹介しているのがこの本。しかも文体は紳士的で翻訳は読みやすいです。
高いので中古で買いました。これだけ厚い本だとめくるのが大変なのでまずは本で買いました。佐藤優さんは、Kindleでも本でも両方持っておくと便利と言っていましたので、そのうちKindleでも買うかもしれません。
大田 2020年217冊目(通算575冊)
わたしは、閉店!となったとたんににわかに聞く「惜しい」という言葉が嫌いで、同じではないが近いニュアンスで人を死を以って偲ぶのも好きではありません。そう断った上でですが、日本の47都道府県の良いものを巡り、したためた三浦春馬氏のこの本は、内容以上に深く思うところがありました。それは何かというと
これほど深く広く見聞を深めて、おそらくそれを通して自分の内側も深く広くされたであろうに、自ら命を落とすことになってしまうなんて、自分を追い込むことを良しとする考えや苦しんでこそ浮かぶ瀬もあらんという考えなど消しては元も子もないが、小さくしたいものだ
ということです。それを強く思いました。
本は、雑誌『プラスアクト』で4年かけて連載したもの。北海道の江差追分(民謡)、近江の和ろうそく、石川県の温泉、奈良県の瓦としゃちほこなど、造り手や担い手の方々と会い話した内容がまとめられたものです。ものに限らず、新旧織り交ぜた内容で飽きません。そして、そのなかのいくつかを「ああ、わたしもほしいなぁ」と思ったり、訪れてみたいという欲求が湧きます。
囚われたくないので、読みながら、三浦春馬氏の死については少しずつ忘れたいと思っていますが、身近なところにおいておいてときおり捲っては、刺激をいただきたい本です。
三浦さんが北海道の江差で聴いたであろうと江差追分はこのような歌です。
大田 2020年216冊目(通算574冊)
もうまさにSNSやテレビを観ていて感じる驚異が「正義中毒」。
その根源を探る姿勢と対処法を紹介してくれている本。
エビデンスベースとは少しいい難い。中野信子さんのエッセイを読むくらいのつもりがちょうどよい。
そしてけっこう得るものがありました。
わたしの偏見かもしれませんが、女性の科学よりの本には、「これこれが故にこれ」というロジックよりも「だいたいこういう感じ」というヒューリスティックなプロセスの見せ方をする方が多い気がします。たとえば黒川伊保子さん。それは良いことだと思います。そのロジックもなんとなくもどっちも大事だとわたしは「なんとなく」思っています。
この本を読んで得られるのは、端的に言えば「メタ思考」。ついついわたしたちは、悪を攻撃することに夢中になってしまいますが、(昨今なら立憲民主党の石垣のりこさんの大事な時に体を壊す癖がある危機管理能力のない人物」発言の炎上など)この本を読むことで
「あれ?これ正義中毒じゃね?」
と気づくことができるようになります。もうそれだけでかなり儲けものな本じゃないでしょうか。加えて、ヒューリスティックながらかなり効果が高そうな(これからやってみるので、想定ですが)対処法も得られます。例えば、「普段絶対読まない本を買って読んでみる」など。これ奇しくも先日わたし、ラファエルというYoutuberの方の本がそれに該当していて(これ以外もときどき、苦手に思う人の本を読んでいます)、やはり自分の世界が拡張した気がします。
それ以外にも普段通らない道を通って帰るなど、手軽な対処法がいくつか紹介されています。SNSなどに参加していると好まない情報や人をどんどん排斥していきますんで、世界がずいぶんと偏重してしまいます。その是正を積極にやっていくのは大事なことだと感じています。
ちなみにドーパミンを快楽物質だとこの本では解説されていますが、ドーパミンは快楽ではなく「もう少しで手に入りそうな焦り」を作り出すものです。そういう細かい話を棚に上げて読みましたが、わたし好きでした、この本。
大田 2020年215冊目(通算573冊)
東京という都市は、ただ住んでいるだけだと気づきづらいのですが、まさに水の都であり、変化の激しい都市です。少し紐解けば、地名と歴史がつながったり、都内の街それぞれにある歴史の痕跡を見つけたりととても楽しい。タモリさんみたいな趣味になりますが、知識一つで降り立つ駅でいちいち楽しくなれるのだからこんなコスパの良い趣味もないのではないだろうか。
例えば、皇居。ジョギングや自転車が趣味の方々が日々そのまわりを巡っているところですが、皇居になったのは1868年から。それまではご存知、江戸城です。明治維新を経て、江戸が東京になり、そのときに天皇が東京に移りました。
さて、その皇居まわりから歴史を紐解いていくなら、江戸始図がちょうど良さそうです。
江戸始図(えどはじめず)
Image: 松江歴史館「【新発見】最古級の江戸城絵図「江戸始図」」
これは、徳川家康が築いた江戸城を描いた最古級の絵図で、江戸城とそのまわりの大名屋敷が描かれています。
現代の東京の地図と見比べてみましょう。
Image: Google map
江戸始図のほうが比率が歪んでいますが、堀の輪郭が合致していますね。
そんなこんなを水路を切り口に紹介してくれているのがこちらの本です。
この本からは、首都高ではジャンクションのある箱崎が、船遊びのスポットだったことなどがわかってとても楽しいです。
大田 2020年214冊目(通算572冊)
『星の王子さま』で有名なアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリのエッセイ集。1939年に出版。
テグジュペリは1900年生まれなのでざっくり言って39歳のときに出版したことになります。そしてテグジュペリは1944年(44歳のとき)地中海上空で行方不明となっています。読者からの愛称は「サンテックス」。
人間の大地は、わたし『人間の土地』とおぼえていたんですが、最近買ってみると『人間の大地』に翻訳が変わっていました。アメリカ版では、『Wind, Sand and Stars 』となっています。
とても男っぽく、油の匂いがするエッセイで、観たこと無い山や雲海に想像が広がります。かっこいい先輩、ギヨメの人生についても深く考えることになります。ロマンということばで片付けるのは乱暴で、じゃあ何かというと飛行機に魅せられた男が、世界をどう広げて、どう深めていくのかの追体験、というのがこの本について言えることなんじゃないかとわたしは考えています。
そうえいば、ゲランにサン・テグジュペリの作品から影響をうけて作られた香水があります。その名も夜間飛行。『夜間飛行』というエッセイ集もありますが、香水の背景にある世界をこの本からも垣間見ることができます。
大田 2020年213冊目(通算571冊)
ディケンズの『デイヴィッド・カッパーフィールド』といい、古典って結構壮大で、ゲーテの『ファウスト』も読んでみると壮大でした。
日本語の翻訳ではちょっとわからなかったんですが、全文韻文で書かれているそうです。すごいなぁ。
けっこう古典などの小説であるのが、著書の死後に発表されることなんですけど、この『ファウスト』もゲーテの死の翌年である1833年に発表された作品。
ファウストには元の話があって15世紀ころのドイツに実在したといわれる錬金術師のファウストゥス博士が悪魔と契約して四散されたという伝説がベースになっています。しかしゲーテのファウストは、ちょっと違う結末に。
私が読んだのは、高橋義孝氏の翻訳。
よみきるぞ!とか何かを学ぶぞ!って気構えるとつかれるので、ぼんやり読むことをオススメします。人造人間ホムンクルスが出てきたり、美女が出てきたりと楽しめます。そういえば森鷗外も翻訳したことがあるそうです。
読むにあたってギリシャ神話の知識があると助かるので読みながらでも阿刀田高氏の『ギリシア神話を知っていますか 』も読むことをオススメします。読みやすい!
大田 2020年570冊目(通算212冊)
第一印象は、かなり悪くて、まあまま悪いまま読み終わることになるんですけど、ときどき「これはさすがだなぁ」と思う表現にぶつかりました。
でも、そういう箇所以外は、けっこう雑に感じました。読み進むのが辛いものがあります。そんなわけでオススメはしません。歳を重ねて、深みが増したとか作風がまたひとつ変わった、とは感じませんでした。
全体的にはどうしたって、最近読んでいる古典に比べても、文の密度が薄く、伝えたいものの密度も薄く感じました。
ただ途中で和歌が入ってくるんですが、なんとなく面白かったです。良いのか悪いのかわからないままに。
それにしても、セックスについて書くの、ちょっと一回やめて欲しい。
大田 2020年211冊目(通算569冊)