絵をなんとなく描きたくなる
毎日、わたし英会話でヨーロッパの方々と話をするのだけれど、印象的なのが、彼らの趣味に詩や絵が含まれていることが多いことです。わたしたち、日本人は、そんなに詩を書いたり、絵を描いたり、趣味でしたりしないのではないでしょうか。
上手いとか下手とか関係なく、絵は描いてみると楽しい。
妻とときどき夜に絵を描いて、見せあったりしているのだけれど、そうするとおかしく笑ったり、感心しあったりできる。そして、何かしらの発見がある。犬の顔がうまくかけなかったりすると、どう見えるのか? どう描いたらちゃんと伝わるのか?という課題が生まれるし、そもそも「さて何を描こうか?」という課題の創造からして楽しい。
寄藤文平さんのこの本は、絵の練習から、物の見方まで、いろいろと学べる。ただ読むだけでも楽しいけれど。これを読んでから、コルビュジェのプリズムな絵を観てもまた楽しかったりする。
絵を描く、という楽しさを「ラクガキ」レベルの気楽さに引き下げて、習慣や日常に引き寄せても良いと思います。
「山はシワ」とか、びっくりするような視点も得られて、けっこうなセレンディピティを得られます。
(大田 2019年77冊目)
適応の期待値の二者間でのトレードオフ関係を対立と定義している。
論文的文体&翻訳のためか、ちょっと、けっこう読みにくい。が、どういうときに人は人を殺すのか、知るのは実生活においても、またフィクションを観たり、作ったりする場合にも興味深い情報が得られます。出版は1999年と古いので、興味が分ければ、その後の著者たちの活動を追えば、アップデートできるかも、と思うもその後の著書は日本語ではなし。英語なら2016年に、Martin Daly氏がKilling the Competition: Economic Inequality and Homicideを出している。
復讐についての見解が面白かった。
復讐とは、抑制機能としてかなり有効だということ。それが、現代では国家が肩代わりしていること。しかし被害者の権利が剥奪されれていることに驚く。
殺人というのは、映画やフィクションでは、ずいぶん猟奇的だったり、異常な心理で行われる「特別な行為」として描かれているが、実際には、ふつうの人たちが行っている。じゃあなんでするのか?なんで女の人より男による殺人が多いのか。嬰児殺しは、どうして起こるのか。などなど。
地域差があるのが、なぜか、というのも興味深い。書かれていなかったが、遺伝子の違いもあるのだろう。例えばアジア人と欧米人では、セロトニンのトランスポーターの型の違いが明確にある(要は、欧米人は楽観的、アジア人は悲観的という傾向さがあるということ)。
(大田 2019年 76冊目)
写真集を読書かも知れませんが、ご紹介したいのもあり、読書にカウントします。
映画は、偶然発見された大量のネガをオークションで見つけた青年が現像してネットに載せたら大反響、無名の天才ストリートフォトグラファ、ヴィヴィアン・マイヤーの存在に世界が驚く、という内容でした。
映画は映画で面白いのですが、写真もまたおもしろくて、美しい。
彼女の写真を観ていると、わたしたちもまた無名のままでも、美しい風景に気づき、世界を動かすような言葉を紡ぎ出すことができるという事実にふれることができます。
もちろん彼女は無名ですが、才能あふれるフォトグラファーでした。
しかし、有名であるとか、いいねがいっぱいついているとか、フォロワーがいっぱいとか、関係なく、美を手で捉えて、それを外に紡ぎ出せるとことには変わりがなく、それをびしびし体感できます。
これは、幸福にも似ています。幸福というのは、「なる」とか「見つける」のではなく「そこにあることに気づく」ことで得られるものなのだそうです。
BGMもなしに、わたしたちは感動して良いことを、ヴィヴィアンの写真を通して、わたしたちは体感できます。
今日は素晴らしくて、あなたも奇跡の存在である(今地球上にいる生き物は0.1%の生き残り。99.9%は絶滅しているそうです)、ということは大事で、その辺(幸せには今すぐなれる、ということ)は、『嫌われる勇気』にも近いことが書かれています。
ちょっと感傷的な感想になりましたが、良い写真集です!
(大田 2019年 75冊目)
マックス・ヴェーバー側からしたら、そうかなーって思うかもですが、なかなか説得力のある内容です。
例えば、太陽王ルイ14世は、愛妾のためにヴェルサイユ宮殿を作ってるし、女に現をぬかして大金を使いまくった人間の姿など、歴史上にいっぱいある。というか恋愛という動機がなければ、シャンパンはこんなに売れないだろうし、スイスの時計も売れないだろうし、ラグジュアリーホテルなんてこんなに無いじゃん、って観察は、的を得ているだろう。それですべてを語ろうとすると無理が生じるだろうけれど、贅沢の脚は、恋愛でできているわけで、そしてその贅沢が資本主義を支えている柱のなかなか立派なやつのひとつなんじゃないだろうか。
ちなみにコングロマリットの モエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン SEの2009年(古いけど)の売上高は170億5300万ユーロ。2.1兆円。
論拠となる数値もいっぱい出してくれて、ありがたいんですが、しかし読みづらい。時代なのか、なんなのか。だからオススメしないのだけれど、世界を観る目は良くなったと感じます。
ラグジュアリーホテルに泊まるのが、わたしは好きなんですが、泊まるたびに思うのだけれど、こりゃ(ある種の)大人のラブホテルだな、と。
得心至極。
(大田 2019年 74冊目)
橘玲氏の文体は、
なんとなくなんとなーくパセティックな気配を感じさせる気がするのですが、
説得力があり、総合的にはポジティブな生きる力の力学を説いています。
鳥の目、虫の目、魚の目
ということばがありますが、ミクロマクロその他の目で投資のことを語ってくれます。
別の本(『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』)では、生き方について、この複合的な視点を総合的にまとめるという流れで語ってくれています。
株式投資の良いところは……
これはこの本には書かれていないことで私見ですが、
というところです。
言い換えると
ということです。
日本の株式市場は午前9時に開き、午後3時に閉じます。
この時間外に起こるニュースや発表や事件は、開くと同時に株価に影響を及ぼします。
FXや海外の株などであれば、海外の市場が開く時間も大事になってきます。
ということで、
投資をしていると為替もニュースも外交も戦争も我が事(自分の資産)に影響を及ぼす話になってきます。
直接的に。
投資はいくらからでもできるので、
世界情勢や歴史や政治や経済に詳しくなりたかったら、
投資会社に口座を開いて、そこにいくらかのお金を入れるだけで、
それ以前よりずっとニュースを良く読むようになるでしょう。
さて、本の内容に戻ると
橘玲氏は(1959年生まれだそうですが、確かなことはわからない。)、実体験を元にもしていますし、
それまで調べたことをきれいにコンパイルもしています。
経験則的に「こうやれば儲かる」という胡散臭い話ではなく、
投資とはなんぞや?ということを、長たらしくではなく、けっこう簡単にずばっと述べたあとに
詳しく解説してくれています。
もちろん、橘玲氏が言うことを鵜呑みにしないで良いでしょうし、彼自身、考えず、調べず、知らずにいる人たちをオブラートに包んで「リテラシーの低い人」と呼んでいます。私としては、橘氏経由で疑問を作って、自分で調べて、確かめるというのが良いのだろうと仮説しています。
それにしても、彼ほど徹底して調べられるかは自信はありません。それでも、私自身も個人投資家でありながら、知識は世界情勢に対してのアリンコレベルなので、少しでも知識を育て、虫の目以外の鳥や魚の目を獲得して、世界の有り様と自分のいる場所と、これから行きたい場所を見つけたいと思います。
経済、投資、経営、というものは、いっぱい知って、いっぱいやって失敗して、少しずつ目が良くなる、というのが思うに正解な気がしています。すなわち人生もそうなのでしょう。
ただし、メンタルがやられると潰れてしまうので(都会に住む方々なら、電車が予期せぬときに停まるたびに、その存在に思い至れるはず)、何よりも自分の心を大切にした上で、ケガをしながら笑って挑戦し続けるのが、素敵なのではないかと思っています。
(大田 2019年 73冊目)
原題は、The Bulletproof Diet。
Bulletproofは直訳すると「防弾」という意味。
内容は、太っていた著者、デイブ・アスプリー氏は、ハッカーとして才能を活かして起業して成功していたのに太っていて集中力もなくて苦しんでいたけれど、その問題にハッカーとして対峙してみたら成功した!というのもの。ハッカーはOSを攻略するものだけれど、アスプリー氏は、自分の身体をOSとして捉えて、そこにあるバグを探して、自分の思うようにコントロールする術を見つけ出していく。それをまとめてファンを醸成してさらに大成功してお方。
アメリカ人って、こういう感じの方が多い気がします(根拠はひとつだけ。Miracle Morning の著者、Hal Elrodを思い出しただけです。Miracle Mroningについてこの動画がわかりやすいかも。彼もカルフォルニア。)
さて、内容は面白いし、密度がすごい。食事がダイエットのためだけでなく、自分のパフォーマンスを最大化するためのものとして捉えているところに心惹かれる。たしかに朝食を摂っていたころ、朝すごくけだるくなることに悩んでいたけれど、朝食をやめてから、朝からかなり集中力を仕事や執筆に向けることができるようになった。食事とパフォーマンスはすごく密接に関わるという姿勢での探求は興味深い。
一方で、論拠とエビデンスの間があいまいな部分が多い。
例えば、アスプリー氏は、遺伝子組換えが夜に広まって以降、様々な病気が増えたと言っているし、この2つを結びつける証拠はないものの、と断っているが、「やはり遺伝子組換えものは摂らないに越したことはない」という結論を出している。結びつけられる証拠もないのに!?なぜ?。
ただし現在のところ(とはいえ2012年の話だけれど、→)遺伝子組換えに関する科学的な結論をアメリカ科学振興会(AAAS)が出した声明では、
しかも「WHOや米国医師会、米国科学アカデミー、英国王立協会といった権威ある組織がリサーチを行い、いずれも同じ結論に達している。」とまで述べている。
だからわたしは、アスプリー氏のこの本は、「ほんとかな?」という好奇心を育てるのに、とても良い本だと捉えています。
私見だけでなく、いろいろな調査や実体験を通して出しているメソッドなので、興味が湧くものがあれば、「自ら調べてみる!」というアクションの起動にすごく良い。
先日、あるビジネス雑誌の編集長が引用しているダーウィンの言葉を調べてみたら、
ということがわかった。なかなか恐ろしい話である。有名な雑誌の冒頭で、編集長が引用している言葉が、実在していないということは。
以来、わたしは、「引用は自分でする」というルールを設けてました。とは言え、さきのAAASの引用は、鈴木祐氏のブログ「パレオな男」から拝借していますが(でも、もと声明も読んでまーす!証拠として、先の言葉はこれが翻訳されたもの「Indeed, the science is quite clear: crop improvement by the modern molecular techniques of biotechnology is safe. R」)。
さて、ダーウィンがどんな言葉を言っていたと思われていたのかというとこれ。
It is not the strongest of the species that survives, nor the most intelligent that survives. It is the one that is most adaptable to change.
翻訳すると、「生き残る種とは、最も強いものではないし、もっとも賢いものでもない。最も変わることができる種が生き残るのだ」というもので、わたしもかつて引用したことがある(はずかしい!)
『種の起源』のなかにこれに相当する言葉はないそうだ!わたしは実際に読んでいないので、これまた検証が必要だけれど。
とまれ、論拠は自分で探しましょ!という話でした。それでも、「ほんとかよ?」と湧く疑問は宝ですので、この本、ちょっとオススメします!
(大田 2019年72冊目)
アダム徳永氏の本と合わせて読むとバランスが取りやすくなるかなと。
扇状的なイラストに抵抗を感じている人も多いようだけれど、いずれにしろ、日本の性の文化はかなり荒んでいるので、どこかでボキボキっと音がするくらい補正する必要があるので、女性主体でセックスの探求を心がけたほうが良いし、そのためにはこの本はオススメではあります。
ただ、統計グラフなど多用されているものの、母数が明示されておらず、エビデンスとしては使い難い。
ここから学べるのは、1.セックスって男女ともにガチで大事なこと(幸福度、ストレス軽減、病気対策など) 2.日本の男性はアダルト動画などによりかなり間違ったセックス知識をもとにしていて、それが女性を苦しめている。女性側の本当のこえを聞け! 3.テクニカルなことよりも姿勢の重要性をそれとなく知れる ということ。
アマゾンの書評では、「そんなこと知っているぜ」というものもあったけれど、正直「ほんとかよ!?」と疑いたくなる。
男女ともに赤裸々に性生活について語りあえる友人を作れたら、人生においてかなり有益な情報が得られるのではないでしょうか。
ところで、日本性科学会なるものがあることを知って驚いた。
そしてこの著者、友人の同級生で、なんとなく贔屓したくなります。
(大田 2019年71冊目)
多拠点生活というものが注目され、そして「やっぱちょっとむずかしいかも」という声も多く聞こえつつある昨今に、「住むってまでいかないけれど、そこに住んでいる人目線でいろんな土地を観てみよう」というシリーズの鹿児島編。
アラフィフのご夫婦が、仲良く鹿児島でああでもない、こうでもないと話し合いながらガイドをしてくれます。
観光情報としては、図や写真がほとんどないものの、「漫画付きの読み物」として読むととてもしっくりきます。ちなみにこのご夫婦、お酒がとても好きです(笑)。
北海道出身者としては、ぜひ北海道編も読んでみたいです。
(大田 2019年70冊目)
お勧めしないのは、素敵な本だし、中古本がお手頃だけれど、これは、おおむねグラフィックデザイナーにしか必要なさそうだから。逆に、活版印刷に興味があるかたは、ぜひ手にとってみるべきないようです。
著者のシャーロット リバースさんは、世界中のデザイン雑誌に寄稿しているライターで、2010年の出版。出版社は『デザインのひきだし』を出版しているグラフィック社。ちなみにわたしの著書『ポン・プルクワ 白黒猫のつづる手記』もこの出版社です。(ぜひお買いもとめを!)
これは、シャーロットさんの本の翻訳版で、原題は“REINVENTING LEETTERPRESS”で、直訳すれば「活版印刷再発明」となります。タイトルどおり、印刷の起源でもある活版印刷が現代では再注目を向けられているのですが、現代における活版印刷の見本を、世界の活版印刷所と一緒に紹介していく内容になっています。
アメリカのデザイン会社、HOLSTEEが作っているマニフェストのポスターがあるのですが、これも活版印刷で印刷されています。
活版は手間暇とお金がかかるのですが、どうしてそれが注目され、今でも使用されているのかと言えば、本物らしさと人のぬくもりがあるからでしょう。音楽で言うところのレコード(ヴァイナル)に近いかもしれません。
世界では、どのように活版印刷が使われているのか、を縦横して観るには、とても良い本です。
色使い、イラスト、書体、使用用途など、いろいろと知ることができます。
また活版印刷を知っていると、こだわり有る名刺やショップカード、メニューを作っている人や企業の、そのこだわりを理解することができるようになるので、悪くないティップスでもあります。
この本では、世界中の活版印刷所が紹介されていますが、日本にも活版印刷を専門に取り扱っている印刷所はけっこうあります。例えば、弊社で作っているこんな名刺も活版印刷と活字をつかって作っています。
(大田 2019年 69冊目)
本って面白いなと、あらためて感じたのは、本書を読んでいると著者の声が聞こえて、体臭みたいなものも感じた気がしたから。
文体って、口調や話す速さまで、伝えることができるのか、はたまたこっちが勝手に感じているだけなのか、わかりませんが、
わたしはこの本を読みながら、頭の良い年配の方が早口で喋っているように感じました。そしてタバコ(など)の匂いがしました。
感情的には得意ではないのですが、
書かれていることは、おおむね納得しました。
読みながら、まったく違うエリート像について書かれていた、 ピョートル・フェリークス・グジバチ氏の著書を思い出しました。
『ニューエリート グーグル流・新しい価値を生み出し世界を変える人たち』という本ですが、ちょっと今まで思っていたエリート像とはかけ離れていて、それでいてグーグルだから、JPモルガンだからという権威を理由にしたわけでない説得力があって、この両紙を読み比べて、自分なりに結論を出してみたくなりました。
ただし、お二人とも少しふっくらされている。どうして太っちゃうのかしら。
それはさておき、経験則に過ぎないが、それでも説得力のある言葉を何度か耳に(目に)入れておきたいので、また頁を繰るかもしれないです。
でも、どっちかっていうとピョートルさんやデイヴィッド・アトキンソンさん、山口周さんらの姿勢のほうが(わたしのなかでは彼ら、うまくいえない共通の属性でくくれる。むりくり中川政七さんもそこに入れたい)好きです。
それは、私自身が、経験則よりもファクトを重視しているからでしょう。
かと言って、偉大そうな経験を軽視するつもりはないので、また読み返したい。
(大田 2919年 68冊目)
中身のみならず、見た目を鍛える必要があることが
日本のビジネスシーンでも浸透しつつありますが、
この本では、その身につけた方を奥深い教養として教示してくれます。
参考図書の広く深い選定や映画などの紹介の仕方からも著者自身が小手先だけのものではなく、教養としての見た目の作り方を研究し続けてきた軌跡が見えるようです。
この本では、アピアランスを「身だしなみ」「服装」「振る舞い」の3つのカテゴリにわけています。
「海外ではこれが常識」ということの伝達してすませる内容でなくて、「なぜこれが大事なのか」ということをちゃんと説明してくれています。
お金をかければいいわけでもないことなどを含めて、これを読むとすぐに実践できることが多々あるので、
言い逃れできない鞭撻を感じます(笑)。
「教養」というものを、清く生きる知性として捉えているのか、気持ちの良い文体でもあります。
著者の幅広い知識と経験は、それに触れるだけでも楽しいものでした。
中野香織さんの『ダンディズムの系譜』(※)にも出てくるボー・ブランメルの話もちらっと出てきます。
原題の副題が“A Brief history of Capitalism”なことから、経済版のサピエンス全史という売りが伺える。
サピエンス全史の英語版のタイトルは“A Brief History of Humankind”。
著者のヤニス・バルファキス氏は、経済危機のときにギリシャで財務大臣を勤めていた方。彼が娘に
「どうして格差というものがあるのか」
ということを説明するために書いた本。
その答えは、端的に言えば、
余剰。
お金、というのは、本質的には幻想で、
その幻想を共有しているもの同士でなければ成立しない。
その幻想の正体のみならず、
弱点にまでこの本の内容は及んでいます。
『モモ』や『ネバーエンディングストーリー』の著者であるミヒャエル・エンデが、警告し続けてきた貨幣制度の欠点とほぼ一致する内容でした。
読みやすいし、ぐいぐい引き込む力があり、経済にうといと敬遠する気持ちがあっても楽しく読める本だと思います。
(2019年 大田 66冊目)
邦題のほうが躊躇させるタイトルですが、
原題のほうがわかりやすい。
“:59 seconds Think a little, Change a lot.”
「幸せになりたいけれど、
自己啓発本を読んでもうまくいかない」
という疑問に手っ取り早く答えるために著者が研究した結果をまとめたもの。
この本は、せっかちな人にやさしく、
巻末には幸せになるための59秒でできることが紹介されています。
そのうちのいくつかを紹介しますが、
わたしが習慣にしていることもひとつ含まれていました。
どうして習慣にしたのかすっかり忘れていたので(笑)、
復習にも良かったですが、結論からいって効果はあると実感しています。
感謝していることを3つ書き出すということを1週間続けると、それから一月ほどの間、幸福感が高まり、将来に対して楽観的になります。健康状態も良くなります。
畏敬の念が、人間の幸福には重要なのですが、それとも関連しています。仏壇を毎日拝んで感謝する、なんて習慣はじつはけっこう幸福に大事な役割を担っているんです。
自然に対してもOKです。
2.職場に観葉植物を置く
職場に観葉植物があると男性の15%が発想力を高め、女性はそれまでより独創的な解決方法を考えだせるようになる。これは他にもけっこうエビデンスがあるので、ばっちりおすすめします。
3.こどもを褒めるときは才能よりも努力を褒める
これはアドラー心理学でも同じことが言われていますが、結果を褒めると失敗を恐れるようになるんです。
4. 成功した自分より前進する自分をイメージする
とくに第三者の立場でイメージすること。客観的に自分を観る人は、主観的な場合より成功刷る確率が20%高くなる。
5.自分が遺せるものについて考える
『クリスマス・カロル』のスクルージおじさんみたいですが、自分の死んだあとに遺せるものを考えるだけで、行動が長期的になります。
中古でしか売っていませんが、なかなか有益な知識満載の本でした。
(大田 2019年 65冊目)
ルーカス・クラナッハの絵って、
なんであんなにいびつで美しく艶めかしいのか?
と思って読み始めたのですが、
いびつさは、
「マニエリスム」というイタリア、ルネッサンスの美術様式の影響なのだとか。
その特徴は、
などなのだそう。
ギリシャ神話とキリスト教をモチーフとする絵と
肖像画がメイン。
宗教改革のマルティン・ルターと同郷、同時代のため
彼の肖像画を多数描く。
狩野派のような商業的才覚もあり。
リスペクト!
これはカラーで見ないといけないのでスマホかiPadなどタブレットで観ることをオススメします。
(大田 2019年64冊目)
500社もの日本の企業の創業に関わり、
日本初の株式会社を作った、いわゆる
「日本資本主義の父」渋沢栄一。
彼のことをちょっと知りたくなって手にしました。
著者、渋澤健氏は、渋沢栄一の玄孫。つまり、孫の孫。
彼による解釈は、ともかく
渋沢栄一の言葉を100、ざっと目を通してぼんやり見えてくる
思想は、まったく古臭くなく、なんなら松下幸之助さんより
現代的な気がするほどでした。
ピーター・ドラッカーもまた
渋沢栄一を日本のビジネスパーソンの理想像と絶賛しています。
彼が創業に関わった企業には、
帝国ホテル、東宝、東京海上日動火災、日本郵船、IHI、清水建設、東京電力、東京ガス、サッポロビール、みずほ銀行、りそな銀行、川崎重工などがあります。
すごいですよね(笑)。
この本は、ライトすぎるので
渋沢栄一の『論語と算盤』も読まなくては、と思っています。
(大田 2019年63冊目)
私は、この本を読むまで、さして興味のないままに
小保方晴子さんのことを
「顕示欲が強くて、不正をしちゃって、それなり相応の批判を受けても致し方ないけれど、それにしてもバッシングは異常過ぎてちょっとかわいそうなひと」
と思っていた。
反省しても、成長しないので
それを理由に自分を責めないけれど
それでも
この本を読んですぐに、
わたしは、歴史に汚名を残すたぐいのアホだったんだな
と決定的に思ってしまった。
勘違いされたくないのですぐに断っておきたいのだけれど
小保方晴子さんが正しくて、なのに貶められていたことに気づかずにアホだった、
という、間違いが実は正しく、正しいと思っていたことが実は間違いだった、
という認識の逆転が理由ではない。
不確定な情報のまま、誰かを簡単に判断し、
その人が社会的に不正に(人殺しだって、あんなに強く継続的に、全面的に、非難されることなどなかったのではないか?)
糾弾されて、いじめられている状態を「当然のたぐいのこと」と思って放置していたこと
が決定的な間違いだった、ということだ。
この「日記」に感情移入して
ほだされて、味方に転換した、
というわけではないつもりでいる。
当事者の肉声に近い言葉を読んで
自分がどれほど無知だったのか
という事実だけは、間違いなく、私見なく、浮き彫りになってしまったのだ。
この日記を読んで思い出す話がいくつかある。
『夜と霧』、
消毒を発見したイグナッツ・ゼンメルワイス、
そして関東大震災朝鮮人虐殺事件。
『夜と霧』は、ユダヤ人の精神分析学者、ヴィクトール・E・フランクルが
ナチスの強制収容所での体験を綴った本。
地獄のなかで生き残る力と冷徹に環境を見る科学者的な視線を
私はこの本で知ったのだけれど、それに近いものを小保方晴子さんの日記で
追体験した。
辛くても食べて、辛くても、勉強・研究を求めた。
そして生き延びた。
最後に瀬戸内寂聴さんとの対談もある。
誰かが誰かを救うというのは、人間において大切な楔だ。
別の方からの言葉で、小保方さんに
「よく生きていてくれた」
とかけられたものがあったのだけれど
本当にそう思う。
そしてわたしたちは、
どうしてこうメディアというマスに左右され、
人に残酷になれるのだろう?という疑問が
相対的に強く浮き上がってくる。
そこで思い出されるのが
感染制御の父、イグナッツ・ゼンメルワイス。
ゼンメルワイスは、産褥熱の原因が、
医師の手にある「何か」であると仮説し、
手を消毒することをそれが防げることを発見した。
しかし、他の医師たちは、
医師の手は神聖なものであり、それが患者を死に追いやる原因かもしれないという
その説を受け入れらず、ゼンメルワイスを糾弾します。
ゼンメルワイスの消毒で、死亡率が1/6以下に下がったのにもかかわらず。
結局、ゼンメルワイスはその後、神経衰弱になって死んでしまいます。
正しい者が、それを認めないものに糾弾される、アナロジーとして
ゼンメルワイスを思い出したのでなく、
糾弾する多数の人間、つまりほとんど社会が
何を糾弾するとき、アホになっているというアナロジーとして
ゼンメルワイスの生涯を思い出した。
もうひとつ思い出した、関東大震災朝鮮人虐殺事件。
これも同じ理由です。
関東大震災のときに、混乱のさなか、
内務省が警察署に伝えた内容の中に
「混乱に乗じた朝鮮人が凶悪犯罪、暴動などを画策しているので注意すること」という内容があった。
それが世に広まり、朝鮮人、中国人、日本人(聾唖者など)が、数千人殺された。
数千人ですよ?
ただでさえ、震災で人が死んでいるのに。
わたしたちは、
こんなふうにアホになりえる。
アホになって人を糾弾して、殺しまくることがありうる
生き物です。
小保方晴子さんの日記を読んで
それを強く思い出しました。
それから、彼女の文体は、
とてもおもしろい!というか引き込まれる力があります。
作家としても
才能があるのでしょう。
これからの彼女の活躍を楽しみにしています。
わたしは、彼女のことがとても好きになりました。
そして「好きだ」という理由だけで、十分に応援し続けるつもりです。
大田 2019年 62冊目
タイトルどおりですが、
わたしたちが、知らない間(?)に
世界のエリートたちは、どうもアートを学んでいるらしい。
イギリスのロイヤルカレッジオブアートで、
グローバル企業向けの幹部トレーニングが行われています。
アートを、
あればなお良い教養
ではなく
ないと死活に関わる重大な知的武器
として捉えているんです。
なぜか?
著者、山口周氏は、冒頭に
「忙しい読者のために」と題して
著書の要約をまとめてくれています。
それをさらに要約するとこうなります。
なぜ今、武器としてアートの知識が必要なのか?
それには、3つの理由があります。
1つめは、論理的な方法論では解答が似通ってしまって、結果「正解のコモディティ化」に至る。
ビジネス的な課題に対しての解答をサイエンス(コンサルが提供する手段)に頼ると解答が似通って、結果、差別化がなくなる。
ロジックというものは、観測できるファクターで組み立てるので、観測できないのに大切な何かを逃した状態で暫定的な結論を出している
という脆弱さも含まれます(私見)。
おおむね世界は、全体的すでに裕福になっている。
生活に必須のニーズは満たされているので、
わたしたちは、消費を自己実現の手段として行っている。
具体的な例としては、わたしたちは、
携帯やパソコンを機能ではなく、ブランドが持つ哲学を
もとめて購入するようになっています。
わたしは、「チャレンジするリベラルで、美を追求していくスタイルを好む人間」という意味を
アップルの製品を購入して体現する、というような意味です。
3.世界はもう分析が追いつく以上のスピードで変化している
法整備が、マーケットに追いついていない状態をみれば、明らかな話です。
以上の3つを掘り下げる内容が、あとに続きますが
ファクトフルな内容にどんどん読み進められます。
これは、「サピエンス全史」同様
ビジネスパーソンにとって
必須本なんじゃないでしょうか。
(大田 2019年 61冊目)
上野千鶴子、会田誠、(苦手な)高橋源一郎、(苦手な)内田樹、
私が書いた本の帯にコメントを頂いた坂本美雨さん、らと
結婚をテーマにした対談集。
マガジンハウスってすごいなぁ、と
人選の豊かさと豪華さに圧倒されるも
「あ、わたしは対談ものは苦手だ」
ということを知りました。
密度が薄いから。
せっかちなわたしは、
対談をじっくり読めない。
それが、「勧めない」評価の理由だけれど
見ていて楽しい絵面がいっぱいでした。
わたしは、「多作であること」と「生き延びること」を重要だと考えいます。
岡村靖幸さんは、後者の「生き延びること」を体現されているので、強く尊敬しています。
それでいて、寡作なことを残念にもおもっているのですが
寡作が故に、岡村靖幸の楽曲はほとんど、わたしにとってノスタルジーの気配が強く
なのに、それが生き続けて、現代の人たちと現在の岡村靖幸が対話をしていることを
とても嬉しく思います。
そして、うまく言語化できない刺激を受けます。
うまく言語化できないままにそれを無理やり言葉にすれば
「にもかかわらず、生きる力」
というものになります。
つまり元気になります(笑)。
(大田 2019年 60冊目)
『働かないアリに意義がある』の長谷川英祐先生による「眠れなくなるシリーズ」の進化論版。
相変わらず、読ませる文章力の長谷川先生で、読みやすくて、タイトル通りに面白い。
私がこの本で得たアイデアは、
というもの。
ダーウィンは、生物を研究したかったのに、脱線して地層学にのめり込んだ。
その結果、
「地形の変化がものすごくゆっくりなのと似て(アナロジー)、生物もすっっげーゆっくり変化してんじゃね?」
と思い至って、進化論を生み出した。
生物学とは、ちょっと関係ない学問経由で、生物学に、今までなかった、次のステージたる進化論を生み出すことになっている。
ヨーゼフ・シューペンターが、イノベーションを「新結合」と定義しているけれど、この結合、
プラス というよりは カケル なんじゃないかなと。
他にも、経済学的なアイデアが、
生物学に活かされていました(時間割引)。
よって、目下、わたしたちが取り組んでいるミッションがあるとき、
そのミッションとは関係のない知識や経験というのが、必要で、
いつ何の役に立つかわからないそれらの収集をドライブするのは、
直感+好奇心
なんじゃないだろうか。
この考えは、一言で言えて、それは
セレンディピティ(Serendipity)
×がイノベーションの要諦で、
その×を生むのが、好奇心と直感で、
好奇心と直感を、ヒューリスティックに言い換えれば、それは
「遊び」。
わたしたちは、人生を進化させたければ、
ミッションを進めたければ、
「寂しいから」とかではない、
「なんだか気になるから」「ちょっとやってみたいから」発の
遊びが必要不可欠なのではないか、
というのが、私がこの本を読んでえたアイデアでした。
(大田 2019年 59冊目)
本の要約サイト「フライヤー」の創業者が、
実践しながら目指す「最高の組織」の在り方を
まとめたもの。
新たな組織論『ティール組織』(英治出版)で紹介される、
進化型組織を目指しつつ、実践して
起業し、発展させてきた大賀氏によるこの著書は、
個人的には幾分読みにくいものの、
実践して得た知見が散りばめられており、
理論と実践の間の宝物を
拾っていく楽しみが得られました。
本というものは、
そこから自分用に知識を抽出するところが
要諦だと考える、私にとって
要約されたものには、魅力を感じないので
フライヤーが提供するサービスにがっつりコミットしないものの
本を読む、本から知識を得るという姿勢に対して
ハードルをさげて、入り口を広げる、
そういうミッションを実践されているのではないかとおもっています。
同サイトでは、
本の要約のみならず、
気にある知識人たちのインタビューも掲載されています。
本の要約は、
出版社と拮抗しそうなのに
このような充実した内容に至るには
多くの障害があったはずなので、
やはり、尊敬の念を強く抱きます。
(大田 2019年 58冊目)